『死のクレバス――アンデス氷壁の遭難』(J・シンプソン/岩波現代文庫)を読みました。
作者は、パートナーのサイモンと二人きりで、アンデスのシウラ・グランデ峰の登攀に挑戦しましたが、途中の事故で致命傷を負ってしまいます。
さらに、悪化するばかりの天候も相まって、自分を支えてくれていたパートナーにも限界が訪れ、その時がやってくるのです。
パートナーに命綱であるザイルを切られてしまいます。
深く暗いクレバスに落ちていく作者が、いかにしてこの窮地を乗り越え、生還したのか。
この本はその当人が記した実話です。
本書の臨場感はあまりにリアルで、読み進めることが怖くて仕方ありませんでした。
そのリアルさに、読んでいる私も「生きたい」と強く思ってしまうほどなのです。
そして、生きることはこれほどまでに過酷なのかと、今こうして何気なく生きていることが不思議になってくるのです。
本当にすごい本でした。
私は冬山には登りませんし、登山と言えば富士山に登ったことがあるくらいなので、文中に登場する登山用語や道具の名前はほとんどわかりませんでしたが、そんなことはまったく気になりませんでした。
死と生だけを見つめることができる本です。
もし、今ある命を粗末に扱う人がいたら、それがいかに儚く、もろく、強いものなのかを、この本で知ってもらいたいです。
生きているだけで素晴らしい、のではありません。
生きようと努力することが素晴らしいのではないでしょうか。
